「もう21にもなるのに、中身は子どもじゃないか」
苦しくて、ちょっと情けない。でも、それが正直な自分。
悶々とした日々を送った20代の僕がいた。
いままた、あたらしい悶々にぶつかっている40歳になった俺がいる。
そして2人は、向かい合う。
悩むこともわるくない。
もんもん文学賞第1回受賞作品! この賞が生まれるきっかけとなった作品です。
著者:武井岳史
サイズ:A5判/148P
誰か僕の話を聞いてください。
僕は、とてもダメな男なんです。
大学一年生なんですけど、このところキャンパスに入っていません。
行かなければ行かないほど行けなくなり、二学期は今のところ出席ゼロです。
父は海外へ出張中。
現在、母と妹二人の四人暮らし。
遅く出かけて行って早く帰って来る僕を見て、母は、学校をサボっていることに気付いているようですが、特に小言は言いま せん。
二つちがいの妹・千夏も、九つちがいの彩も、それについては何も言いません。
ここ数年、家庭内で「寡黙な男」を決め込んでいるので、干渉しないようにしているのだと思います。
自室で自問自答する、声にならないひとりごとは、すっかりクセになってしまいました。
満たされない思いの丈を原稿用紙に書き殴る、そんな日々を過ごしています。
カラカラカラ。
サッシ戸を開けたら、月が出ていました。
一九八一年十二月六日午後十時。
あと二時間。
そんな僕もいよいよ大人——二十歳になってしまうんです。